江戸城天守再建に現実味? 人気漫画がリアルシミュレーション

 宮内庁が今年9月、皇居・東御苑で復元模型を公開し話題となった「江戸城天守」。約360年前の「明暦の大火」で焼失した日本史上最大の木造天守は歴史愛好家らのロマンをかき立てる存在だ。漫画家の黒川清作(せいさく)さん(39)は今年7月まで青年コミック誌「ビッグコミック」(小学館)で天守を復活させる「江戸城再建」を連載した。「再建できれば未来の子孫が誇れる文化財になる」。黒川さんが語る、江戸城再建の魅力とは―。(文化部 篠原那美)

専門家から何度も指摘受け…

 「天守の周りに御殿や大奥なども配置したジオラマだったら、江戸城の巨大さがもっと引き立ったかもしれないですね」

 宮内庁が公開した江戸城復元模型について、そう語る黒川さん。同作は黒川さんにとって連載デビュー作。単行本全3巻も刊行された。担当編集者が入社時から温めていた企画だったといい、戦国漫画を得意とし、城に興味を持っていた黒川さんに声がかかった。

 「地元の千葉県館山市には館山城があり、城といえば天守のことだと子供のころから思っていました。戦国時代の城は日本各地にあるのに、首都・東京にないのはなんでだろうと、皇居に残された台座をみるたびに、不自然な感じがしていましたね」

 本格的に城を描くのは初めてだったが、描くならリアルに想像できるものをと、伝統建築に詳しい広島大名誉教授の三浦正幸氏に監修を依頼した。

 「カラーで仕上げた江戸城天守に『柱が足りない』と三浦先生から指摘を受け、描き直したこともありました」と振り返る。

技術継承の機会に

 物語の舞台は202X年。主人公である大手デベロッパーのエース社員が、皇居・東御苑に高さ約60メートルとなる木造天守を再建したいと社内会議で提案する。

 費用500億円。宮内庁、文化庁、法的規制、国民感情…。困難な課題がいくつも想定されるなか、主人公は熱意と再建の意義を武器に、巨大プロジェクトに挑んでいく物語だ。