没後50年 三島由紀夫と私

狂言師・野村萬斎さん 「言葉の呪縛力」に衝撃

「三島の作品を演じたことはまだないので、チャンスがあればぜひ」と話す野村萬斎さん(飯田英男撮影)
「三島の作品を演じたことはまだないので、チャンスがあればぜひ」と話す野村萬斎さん(飯田英男撮影)

能を解体し再構築、続けたい

 昭和を代表する作家、三島由紀夫(1925~70年)は優れた劇作家でもあった。作品は、国内外の舞台で度々上演されてきた。三島戯曲の中で最も高い評価を受けている「サド侯爵夫人」(※1)の演出を手掛けた狂言師、野村萬斎さん(54)は、その「言葉の呪縛力」に衝撃を受けたという。(聞き手 水沼啓子)

 <平成2年、東京グローブ座(東京都新宿区)でスウェーデン王立演劇場が「サド侯爵夫人」を公演。監督はイングマール・ベルイマン。スウェーデン語で演じられ、観客は同時通訳イヤホンを付け鑑賞した>

 イヤホンガイドからは、三島の原文が聞こえてきた。淡々と正確に言葉をつないでいて、スウェーデンの役者の演技もかなり抑えられていた。三島が作品に込めた秘めたる何かが伝わってきて、ものすごく引き込まれましたね。「言葉の呪縛力ってこんなにあるんだ」と、僕の中ではショッキングな出来事でした。いつか、自分もやってみたいと思いました。

 <24年、萬斎さんが芸術監督を務める公共劇場「世田谷パブリックシアター」(東京都世田谷区)で「サド侯爵夫人」を演出。蒼井優、美波、神野三鈴、町田マリー、麻実れい、白石加代子が出演した>