三島由紀夫 「潮騒」の舞台で育んだ知られざる友情 三重・神島

 三島由紀夫が昭和29年に発表した小説「潮騒」は、5度も映画化されるなど大衆的な人気を誇る作家の代表作となる。伊勢湾に浮かぶ小さな島を舞台に、若い漁師の新治と美しい少女、初江の純愛を描いた青春文学。作品の成り立ちを追うと、先行して作られていた物語の構想が、島民たちとの交流の中で豊かに肉付けされていく様子が見えてくる。  (荒木利宏)

創作の源泉

 《歌島(うたじま)は人口千四百、周囲一里に充(み)たない小島である》

 「潮騒」は、作品のモデルとなった神島(三重県鳥羽市)の説明から始まる。三島は執筆のために2度、島に足を運んだ。のちに「私の詩嚢(しのう)は肥えた」と回想したように取材行は創作の源となり、島の人々との交流も、名作を生み出す大きな要素となった。

 「初対面のときから、君を題材に小説を書きたいと三島先生にいわれたことを今でも覚えています」