「道徳的であることは経済的」渋沢栄一の知恵 鹿島茂氏に聞く  

仏文学者の鹿島茂氏=東京都港区(佐藤徳昭撮影)
仏文学者の鹿島茂氏=東京都港区(佐藤徳昭撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大が、格差拡大など困難を抱える資本主義に試練を課している。NHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公、渋沢栄一から、現代にも通じる知恵を引き出せないか。令和6年度に新一万円札の顔になる渋沢は、「日本資本主義の父」と呼ばれた人物。伝記を著した仏文学者、鹿島茂氏は「道徳的であることが経済的、渋沢はそう考えた」と言う。 (聞き手 坂本英彰)

 --渋沢栄一は将軍、徳川慶喜の弟、昭武の訪仏に下級幕臣として従い、ナポレオン3世統治下の経済的発展を目の当たりにした

 「当時のフランスを席巻していたのが、皇帝自身も含むサン・シモン主義者たちだ。富を生むのは循環だと考え、大きな金の流れをつくる銀行、金と物を媒介して利益を生む株式会社、人や物を移動させる鉄道を敷いた。フランスはカトリックが多く資本主義に必要なエートス(職業倫理)に薄い。そこで基幹産業を一挙に作り、プロテスタントの米英が1世紀かけたことを15年で達成してしまった」