コロナ 苦闘と共生

感染症の教訓、次代に残す 政府対策と結果の検証必要

 「感冒全国を風靡(ふうび)」「東京でも毎日十一、五(11~15)名死ぬ」-。100年前の大正時代、世界的に大流行した「スペイン風邪(インフルエンザ)」の国内での蔓延(まんえん)状況を、新聞「時事新報」はこう伝えた。

 このインフルエンザは1918~19年に流行した。当時の世界人口の25~30%が感染し、約4千万人が死亡したとされる。

 厚生労働省の前身に当たる内務省衛生局がまとめた報告書「流行性感冒」(平凡社)によると、国内では18(大正7)年から21(同10)年にかけて約2400万人が感染。約38万人が死亡するなど、近代日本で最悪ともいえる被害となった。

移動制限・休業なし

 感染者、死者ともに第1波が最多だったが、死亡率は第2波が第1波の4倍以上にはね上がった。国立病院機構仙台医療センターの西村秀一・ウイルスセンター長は「今年の冬に新型コロナの第2波が来れば注意する必要がある」と話す。

 当時の衛生当局はうがいやマスク着用、密集を避けることなど現代と変わらない予防策を打ち出し、ポスターなどで啓発した一方、移動の制限や休業要請はしていない。海外では劇場を閉鎖するなどの事例があることは知られていたが、政府の対応に批判や議論が起こった様子もない。