「あれ、知らなかったんだよねぇ…」
新型コロナウイルスの感染が全国に広がり、緊急事態宣言下にあった4月半ば。官房長官の菅義偉(すが・よしひで)は、自民党の若手議員を前に言葉を選びながらもこうつぶやいた。
「あれ」とは、全世帯への布マスク配布と、シンガー・ソングライター、星野源が歌う姿に首相(自民党総裁)の安倍晋三が自宅でくつろぐ様子を重ねた動画をネット配信したことだ。
菅は小中高校などの全国一斉休校でも最終決定の場にいなかった。政権の中枢で7年半にわたり危機管理を担ってきた菅が、重要な局面での首相判断に関わっていないのは異例だ。
「安倍と菅の間にすきま風が吹いている」
こうした声が永田町周辺でささやかれた。菅の側近議員はこう指摘する。
「菅さんは首相を決して悪く言わないし、本人同士の関係が悪いわけではない。ただ、首相の周辺に対しては少し思うところがあるようだね」
その微妙な距離感は、今月11日の記者会見でも垣間見えた。安倍が菅との関係を「一心同体」と表現したことに関し、「安倍政権に最後まで添い遂げる決意か」と質問された菅は、淡々とこう答えた。
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