外交安保取材

首相の質問が生んだ日本版海兵隊

日米合同上陸訓練に参加した陸上自衛隊水陸機動団と米海兵隊の隊員。奥は米軍の高機動ロケット砲システム・HIMARS=2月9日、沖縄県金武町の米軍ブルービーチ訓練場(杉本康士撮影)
日米合同上陸訓練に参加した陸上自衛隊水陸機動団と米海兵隊の隊員。奥は米軍の高機動ロケット砲システム・HIMARS=2月9日、沖縄県金武町の米軍ブルービーチ訓練場(杉本康士撮影)

 陸上自衛隊と米海兵隊の連携強化が進んでいる。その象徴といえるのが、「日本版海兵隊」とも呼ばれる陸自水陸機動団(水機団)と米海兵隊との関係だ。米側は中国軍ミサイルの射程圏内で戦うための改革に着手しており、その成否を握るカギとして同盟国との連携を重視している。ただ、陸自と海兵隊の関係はそれほど古くもない。両者が肩を組んで事態に対処するきっかけの一つとなったのは、ある首相の質問だった。

 平成8年1月から10年7月まで首相を務めた橋本龍太郎氏は異色の首相だった。歴代首相が敬遠しがちだった自衛隊幹部と大っぴらに接触し、政府専用機に乗った際は報道陣の前で航空自衛隊のフライトジャケットを着こんでみせた。

 当時の統合幕僚会議議長と陸海空自衛隊の幕僚長を集め、杯を酌み交わすこともあったという。そうした酒の席で橋本氏は聞いた。

 「海兵隊のカウンターパートはどこか」

 当時、海兵隊は日本国内で注目を集めていた。7年9月の少女暴行事件を受けて在沖縄米軍基地の整理・縮小が検討され、日米両政府は8年4月に海兵隊が利用する普天間飛行場(同県宜野湾市)の返還に合意する。軍事の役割を重視するリアリストの中にも海兵隊の沖縄駐留を不要だとする議論があった。

 しかし、居並ぶ将官たちは橋本氏の質問に答えられなかった。米海兵隊は海軍省が管理するため、儀礼上は海上自衛隊がカウンターパートだ。一方、海兵隊歩兵部隊が共同訓練の相手とするのは陸自。海兵隊が保有する戦闘機は空自戦闘機と連携する。自衛隊幹部は顔を見合わせるしかなかったという。

「専守防衛」の壁

 海兵隊のカウンターパートはどこか。後に陸自東部方面総監となる磯部晃一氏は9年1月に当時の陸上幕僚長から指示を受け、海空自衛隊との調整に当たった。磯部氏は海兵隊指揮幕僚大学への留学から帰国したばかりだった。