美しき勁き国へ

櫻井よしこ 李登輝氏の愛に応えよ

平成19年6月、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見する台湾の李登輝元総統(ロイター)
平成19年6月、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見する台湾の李登輝元総統(ロイター)

 台湾の李登輝元総統はいつも、日本へのあたたかいまなざしと日本人への慈しみを率直に表現した。お会いすると大きな掌(てのひら)でこちらの手を包み込むようにして中へと導き、青年のように張りのある声で語るのだった。

 西田幾多郎の『善の研究』をはじめ青年時代に貪(むさぼ)り読んだ内村鑑三、新渡戸稲造(にとべ・いなぞう)などの名著に根差した人間愛と哲学を説き始めると、時のたつのも忘れた。台湾人の直面する中国問題を語るとき、傍らで静かに聞き入る曽文恵夫人も言うのだった。

 「二・二八事件など、台湾人は本当にひどい体験をしました。そうした歴史の真実さえ教えてもらえなかった台湾の人がかわいそうでなりません」