安倍政権考

安倍外交は価値観外交だったのか 融通無碍な二面性に真価

日米印首脳会談の冒頭、笑顔を見せる(左から)トランプ米大統領、安倍晋三首相、インドのモディ首相=令和元年6月28日、大阪市住之江区(代表撮影)
日米印首脳会談の冒頭、笑顔を見せる(左から)トランプ米大統領、安倍晋三首相、インドのモディ首相=令和元年6月28日、大阪市住之江区(代表撮影)

 安倍晋三首相が辞意を表明した4日後の9月1日、米有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、安倍氏退陣の影響を議論するセミナーを開いた。CSISが外国首脳の辞任をテーマにセミナーを開くのは異例だという。

 「日米関係は兄と弟の関係と語るのが普通だったが、アベさんの在任期間で考え方が変わった。日米はもはや兄弟ではなく双子だ」

 CSISのジョン・ハムレ所長はこう述べ、首相に「永遠に感謝する」とたたえた。ハムレ氏が感謝したのは、首相が「進歩的な西洋的価値の旗振り役だった」からだ。

 安倍外交は、米国が主導してきたリベラルな国際秩序の維持を図った。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を決め、自民党内の反対を押し切った。トランプ米大統領がTPP離脱を決めても、残る11カ国で新たなTPPを発効し、アジア太平洋地域の自由貿易を守護した。