学術会議への警鐘 学問の自由は政府に与えられるものか 東大教授・戸谷友則

日本学術会議をめぐる一連の問題は国会でも議論に―。梶田隆章会長は10月16日、菅義偉首相と会談し、その後、記者団の取材に応じた=首相官邸(春名中撮影)
日本学術会議をめぐる一連の問題は国会でも議論に―。梶田隆章会長は10月16日、菅義偉首相と会談し、その後、記者団の取材に応じた=首相官邸(春名中撮影)

 2年ほど前のことである。私が所属する日本天文学会では、日本学術会議が出した「軍事目的の科学研究を行わない」という声明への対応をめぐり議論していた。学術会議会員でもある重鎮の先生方が、声明に賛同する形で学会を少々強引にまとめようとしているとも感じられ、私は声明への批判と学術会議という組織の問題を指摘する意見記事を執筆した。学術会議が、画一的な価値観で全ての研究者を縛るのはおかしいと思ったからだ。

東京大教授の戸谷友則氏(酒巻俊介撮影)
東京大教授の戸谷友則氏(酒巻俊介撮影)

 学術会議の新会員は会議内で選考され、政府に推薦される。誰がどのような根拠で推薦されたのか、一介の研究者には毎回何の説明も無い。偉い先生の私的なクラブであればそれもよいが、学術会議は全ての研究者の代表とされ、政府の内部機関として存在し、大学や研究者の行動を制限できるほどの力を持っている。その非民主的に選ばれたごく一部の研究者の団体が、全ての研究者に画一的な価値観を押しつけて、自由を縛ることが許されるだろうか。

 軍事研究禁止の声明により、多くの大学は防衛装備庁の研究費助成に応募することを禁じ、それまでの研究が止まってしまう研究者もでてきた。