政治デスクノート

尖閣衝突事件の政治介入を無視する人たち

平成22年9月17日に発足した菅直人改造内閣の初閣議を終え、記念撮影に臨む(左から)菅首相、前原誠司外相、仙谷由人官房長官=首相官邸(大西史朗撮影)
平成22年9月17日に発足した菅直人改造内閣の初閣議を終え、記念撮影に臨む(左から)菅首相、前原誠司外相、仙谷由人官房長官=首相官邸(大西史朗撮影)

 産経新聞は自民党総裁選の真っ最中だった9月8日付の1面などで、10年前の平成22年9月7日に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の領海内で発生した中国漁船衝突事件に関する記事を掲載した。海上保安庁の巡視船に衝突させた中国人船長について、勾留満期前に処分保留で釈放したのは当時の菅(かん)直人首相の指示だったと前原誠司元外相が証言した。

 異例の釈放が「官邸の指示」だったとの傍証はあったが、当時外相だった前原氏が実名で告白した。法と証拠に基づくべき検察の捜査が、中国への過剰な配慮による政権トップの指示でゆがめられていたわけだ。

 菅氏は取材に「記憶にない」と答え、産経の報道後はツイッターで「指揮権を行使しておらず、私が釈放を指示したという指摘は当たらない」と釈明した。当時、菅氏らが主張した「釈放は検察独自の判断」は、検察が政権を忖度(そんたく)した結果だとでもいうのだろうか。指揮権の行使があったか否かは問うていない。菅氏は、前原氏が証言した「釈放しろ」「オレの言う通りにしろ」といった自身の発言について、結局は否定していない。

 「検察への政治介入」を明らかにした前原氏の証言について、共同通信や時事通信などは間もなく同様の記事を掲載したが、朝日新聞や毎日新聞が報じた形跡はない。前原氏は聞かれれば同じことを答えたに違いない。あえて取材せず、「検察への政治介入」を無視しているのだろうか。