学術会議 改革の行方

(上)文系に目立つ「恣意的人事」

 「日本学術会議の会員は旧帝国大の所属が多数を占めている。そうではないと仲間になれないのはおかしい。これからは、はっきり言おうと思う」

 首相の菅義偉は10月下旬、周囲にこう語り、学術会議の推薦通りに会員を任命してきた従来の手法の見直しに不退転の決意で臨む考えを示した。

 当時、官邸では会員の候補6人の任命見送りをどう説明するか意見が分かれていた。事務方は「総合的、俯瞰(ふかん)的に判断した」とすべきだとの意見が大勢だった。国家公務員の人事の理由を明かすことはできない上、「どう説明しても一部の学者は文句を言い続ける」とみられたからだ。

 だが、菅は首を縦に振らず、攻めに転じた。10月28日の衆院本会議では会員構成の偏りを指摘し、同30日の参院本会議では「現在の会員は旧帝国大といわれる7つの国立大に所属する会員が45%を占めている。それ以外の173の国公立大は合わせて17%だ。615ある私立大は24%にとどまる」と言及した。

 野党や学術会議は反発したが、内閣支持率が大きく下がることはなかった。首相周辺はこう漏らした。

 「あえて問題意識を示したことで、学術会議のおかしさが国民に伝わった」