4月に菅義偉(すが・よしひで)政権の行方を占う3つの国政選挙が行われるが、自民党はこのうち衆院北海道2区の補欠選挙で候補を擁立せず、不戦敗を決めた。鶏卵生産大手「アキタフーズ」による贈収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相の辞職に伴うことを受け、反省の意を示すためというが、有権者に政権与党としての選択肢を提供せず、選挙から逃げる方が無責任ではないか。
吉川被告は農水相時代、大臣室での授受を含め、計500万円の賄賂を受け取ったとして、収賄罪に問われている。菅首相は1月、不戦敗を決めた理由を「事態を重く受け止め、深く反省し、有権者の信頼回復に努めることを優先すべきだと考えた」と説明した。
吉川被告の嫌疑が事実とすれば、閣僚の職責を悪用した破廉恥極まりない事件だ。こうした人物を国政に送り出し、ましてや閣僚に登用した自民党政権の責任も問われるだろう。ただ、党として不祥事を反省することと、北海道2区の有権者に与野党どちらが国政を担うにふさわしいのか選択肢を提供しないというのは、次元の違う話だ。