昭和天皇の87年

不変だった皇室への敬愛 「日本人の真の姿をみた」

画=千葉真
画=千葉真

第206回 天皇の涙

 昭和20年11月12~15日、昭和天皇は三重の伊勢神宮、奈良の神武天皇陵、京都の明治天皇陵を親拝し、終戦の奉告をした。戦後初の地方行幸であり、宮内省の一部には国民の反発を危惧する声もあったが(※1)、随行した内大臣の木戸幸一によればまったくの杞憂(きゆう)だったようだ。

 木戸は日記に、こうつづっている。

 「沿道の奉迎者の奉迎振りは、何等の指示を今回はなさゞりしに不拘(かかわらず)、敬礼の態度等は自然の内に慎あり、如何にも日本人の真の姿を見たるが如き心地して、大に意を強ふしたり」

 京都駅に到着した際も多数の市民が奉迎し、掃き清められた烏丸通りでは、京都御所に向かう車列を沿道の人垣が静かに見守った。

 17日には東京・八王子市の大正天皇陵を親拝。このときも「全然交通を止めないので(昭和天皇だと)全く知らない人もあり周章(あわ)てゝ脱帽する人もある。併し一般には非常に難有(ありがた)がつてゐる様子が明瞭に分る」と、侍従の入江相政が日記に書いている。

 戦前のような厳重警備はなく、奉迎の動員もない。それでも多くの国民は、皇室への不変の敬愛を抱擁していた。昭和天皇は胸を熱くするとともに、改めて国民の苦難を思い、自責の念を強くしたのではないか。