昭和天皇の87年

「天皇の保障」で脅迫!? こうして憲法は“押し付け”られた

画=千葉真
画=千葉真

第210回 マッカーサー草案(2)

 昭和21年2月13日、東京・麻布の外相官邸に、GHQから4人の使者が訪れた。マッカーサーの側近、民政局長のホイットニーらである。

 不安げな微笑で出迎えた外相の吉田茂と国務相(憲法担当)の松本烝治に、ホイットニーは言った。

 「日本の憲法改正案は、総司令部としては受け入れられない。総司令部がモデル案を作ったので、この案に基づいた日本案を至急起草してもらいたい」

 ホイットニーは、英文タイプのプリントを数冊渡すと、こう付け加えた。

 「マッカーサー元帥は、かねてから天皇の地位について深い考慮をめぐらしているが、この案に基づく憲法改正が必要であり、そうでないと天皇の一身の保障をすることはできない」

 吉田と松本は仰天した。自主的に作成した憲法改正要綱(松本試案)の内容を毎日新聞がスクープしてしまったため、相当なクレームがあると覚悟はしていたが、まさかGHQ製の、それも英文の憲法草案まで押し付けられるとは思ってもいなかった。震える手でプリントをめくると、前文の書き出しに「われら日本国人民は~」とあり、第1条の天皇は「シンボル」と規定されている。2人は、色を失って顔を見合わせた。

 これは、大日本帝国憲法の改正案ではない。解体案である。ともかくも「十分内容を熟読したい」と、数日の猶予を求めるのが精一杯だった。

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