
第211回 知識人の変節
昭和天皇の御製のうち、代表作の一つとしてしばしば引用される和歌が詠まれたのは、日本国憲法を押し付けられた年、昭和21年1月の歌会始だ。
ふりつもる み雪にたへて いろかへぬ 松そをゝしき 人もかくあれ
解説は不要だろう。訴追の恐れさえある中で、占領政策の批判とも読める和歌を公表して国民を励まそうとしたところに、昭和天皇の気概があらわれている。
だが、主権回復という雪解けを待たず、率先して色を変える風潮が、ことにインテリ層にみられたのも事実だ。当時の様子を、元外相の重光葵はこう記している。
「戦時中軍部に追随しその希望に先き走りしていたものが、掌を翻すが如く軍部の敵となり、占領軍の謳歌者となったりした…」