山口組抗争“掟破り”の慶弔狙いはまさに「仁義なき戦い」

池田組事務所に隣接する発砲現場の駐車場=岡山市北区
池田組事務所に隣接する発砲現場の駐車場=岡山市北区

 新型コロナウイルスの感染拡大で鳴りを潜めていた山口組分裂抗争。しかし、緊急事態宣言が解除されると、再開を告げるかのように岡山市の繁華街で銃声が響いた。標的は特定抗争指定暴力団神戸山口組直系「池田組」ナンバー2の若頭。別の組幹部の法要直後を狙われ、その日のうちに特定抗争指定暴力団六代目山口組系幹部が逮捕された。慶弔を重んじる組社会で、法要に絡む襲撃は相手が対立組織といえど、“掟(おきて)破り”のはず。警察当局は、タブーを顧みない犯行が、抗争激化の火種となる可能性もあるとみて警戒を強めている。

防カメに発砲の瞬間

 事件が起きたのは、5月30日午後2時35分ごろ。その一部始終を岡山市北区の防犯カメラがとらえていた。池田組事務所に隣接する駐車場で、会話中の前谷祐一郎若頭=当時(58)=に男が1人で近づき、突然拳銃を発砲。若頭は1発目を回避し、男を取り押さえようとしたところで腹部に実弾を受け、膝から地面に崩れ落ちた。近くの住民によると、発砲音は6~7発響いたという。

 その後、男は車に乗り込み、車外から助手席にしがみついた池田組組員=同(62)=を振り落とし逃走。ほどなくして、岡山県警の警察官に銃刀法違反(拳銃所持)の疑いで逮捕された。

 男は神戸山口組と対立する六代目山口組直系「大同会」(鳥取県米子市)の幹部、岸本晃生容疑者=同(52)。若頭と池田組組員は病院に搬送されたが、命に別条はないという。

かつては「絶縁」処分も

 池田組をめぐっては4年前の平成28年5月にも、当時の高木忠若頭=同(55)=が、六代目山口組直系組員に射殺される事件が発生。今回の襲撃は高木若頭の法要が墓所で執り行われた直後に起きた。

 警察関係者によると、組社会では通常、他人同士が杯を交わし親子や兄弟となる「擬制的血縁関係」で統制が図られている。その関係性を裏付ける慶弔儀式を狙うことは、たとえ対立組織が相手であってもタブーとされてきた。