自殺幇助認めるスイス、それでも“積極的安楽死”は禁止の現状

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていた女性の依頼を受け、薬物を投与し殺害したとして、2人の医師が逮捕、起訴された嘱託殺人事件。女性は安楽死を望み、「自殺幇助(ほうじょ)」が法的に認められているスイスへの渡航を検討していたとされる。年間千人超が自殺幇助を受けて死亡しているスイスの現状と、その背景を探った。(南里咲)

自殺幇助団体が支援

 スイスで自殺幇助が認められている法的根拠は、刑法115条の「利己的な理由で他者の自殺を誘導・手助けした者は罰せられる」とする条文だ。同国ではこれを、「利己的」ではない自殺幇助については罰せられないという解釈で運用している。

 「スイスでは自殺幇助が広く受け入れられている」。こう説明するのは、スイス公共放送協会の国際サービス「スイスインフォ」記者の宇田薫さん(39)だ。2014年にスイスに移住し、同国の社会問題を中心に取材している宇田さんによると、「死ぬ権利」を支持する人々が1982年に自殺幇助団体「エグジット」を設立して以降、同様の団体が増加。現在、スイスでの自殺幇助はこれらの団体を通して行うことになっている。団体はいずれも非営利で、財源は寄付のほか、登録会員の会費で成り立っているという。

 国内最大の団体となったエグジットの会員数は年々増加しており、昨年末には、約12万8千人に到達。会員資格として、国籍は問わないが、スイス国内に居住している人に限られている。一方、別の主要団体の「ディグニタス」や「ライフサークル」は国外に居住する外国人も受け入れており、高須クリニックの高須克弥院長もディグニタスの会員であることを公表している。