孤高の国母

(15)生死さまよう皇太子 明治天皇はポロポロ涙を…

明治天皇
明治天皇

 以下は昭和天皇の母、貞明皇后の史実に基づく物語である。

 嘉仁皇太子-のちの大正天皇が誕生間もなく発病し、10歳になるまで壮絶な闘病生活を送ったことは前回書いた。ようやく健康を回復し、未来の伴侶も内定した嘉仁皇太子に、新たな病魔が襲いかかるのは明治28年、15歳から16歳にかけてである。

 この年の嘉仁皇太子は、死に神に取りつかれたかのようだった。3月に流行性感冒に罹患(りかん)し、4月に回復するも5月に再発。6月には腸チフスと診断される。