孤高の国母

(22)旅立ちの日、15歳の少女は覚悟の涙を光らせた

十二単姿の節子姫。結婚の礼にあわせて撮影したとみられる
十二単姿の節子姫。結婚の礼にあわせて撮影したとみられる

 節子姫の父、九条道孝が厳格であることはすでに書いた。

 ひとつ屋根の下で暮らしながら、子供たちが父の顔を見るのは起床後と就寝前にあいさつする時だけ。食事も正月以外、一緒にとることはめったにない-。

 その道孝がある日、節子姫を誘って外出した。明治33年の春の一夜だ。向かった先は築地の料亭。「宮中に入れば料亭などには出入りできないから」という、道孝なりの思い出づくりである。

 はなやいだ座敷に料理と酒が運ばれ、最初で最後であろう親子水入らずのひとときに、少し酔った道孝は、芸者の三味線で端唄をうたった。