孤高の国母

(25)皇太子と初めて対面 「妃は大変お美しい」

皇居の石橋
皇居の石橋

 日本中が祝賀一色に染まる天皇家の挙式。その原型が120年前の、嘉仁皇太子(大正天皇)と節子妃(貞明皇后)の結婚の礼にあることは前回書いた。

 むろん、おてんばに育った節子妃にとって何もかもが異次元の体験だ。厳粛に行われた賢所御前の儀と、国民の熱狂で大混乱となった鹵薄(ろぼ)のパレード。節子妃は、目を白黒させたに違いない。

 明治33年5月10日午後0時30分、嘉仁皇太子と節子妃を乗せた4頭引きの馬車は、予定を大幅に遅れて東京・青山の仮東宮御所に到着した。

 儀式は続く。

 午後1時《供膳の式を行はせらる》(貞明皇后実録1巻28頁)

 供膳の式(供膳の儀)は、結婚した二人が初めて一緒に食事をする儀式だ。婚約内定後、嘉仁皇太子と節子妃が直接会うことはなく、結婚当日のこの日も、午前中の儀式では言葉を交わす余裕もなかったが、この儀式で初めて、二人は落ち着いて対面し、互いに感情を寄せ合う。