孤高の国母

(26)120年前の新婚旅行 心を通わせた二人だが…

伊勢神宮の内宮
伊勢神宮の内宮

 結婚の礼が終わっておよそ半月後の明治33年5月23日、嘉仁皇太子と節子妃は、三重の伊勢神宮、奈良の神武天皇陵、京都の孝明天皇陵と英照皇太后陵などを巡る旅に出た。事実上の新婚旅行である。

 二人を祝福する国民の熱気はまだおさまらない。出発の朝、東京・青山の仮東宮御所から新橋駅までの沿道では、近衛騎兵や学校生徒が整列して奉送し、国旗を打ち振る「拝観の人々何処も山をなし」たと、翌日の国民新聞が書いている。

 この日も快晴。嘉仁皇太子は陸軍少佐の軍服。節子妃は水色の洋服に日傘をさし、群衆の歓呼に笑顔でこたえた。

 駅のホームには見送りの皇族や文武高官が多数並んだ。軍楽隊が君が代を演奏する中、二人を乗せた特別列車が走り出す。

 最初の宿泊地は静岡県の沼津御用邸だ。