正論モーニング

核のごみ 受け入れ表明の寿都町と神恵内村 議論さえ許されない空気

核のごみの受け入れを表明した北海道寿都町。風力発電施設は町のシンボルである=11月(白岩賢太撮影)
核のごみの受け入れを表明した北海道寿都町。風力発電施設は町のシンボルである=11月(白岩賢太撮影)

 原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみの最終処分をめぐり、わが国でもようやく議論が動き出した。11月、最終処分場の候補地を探す第1段階の「文献調査」が、北海道の2町村で始まり、その成り行きに注目が集まっている。議論は深まるのか。現地を取材した。(大阪正論室次長・白岩賢太)

 冬の日本海の荒波が海岸線に向かって打ち寄せる。海沿いにそびえ立つ無数の風力発電施設は町のシンボルでもある。北海道西部に位置する寿都(すっつ)町。人口2900人の小さな町は、かつてニシン漁で栄え、今は沿岸定置網のホッケ水揚げ量で日本一を誇る。

 「最近は肝心のホッケが取れなくなって、漁師はみんな困っとるのよ…」。漁港に戻ったばかりのベテラン漁師は嘆息をつく。

反対を煽るのは…

 漁業と水産業が主力の港町は今、核のごみの受け入れをめぐって揺れに揺れている。今年10月、町は平成19年の高知県東洋町以来となる文献調査への応募を表明し、その是非をめぐり町内外に波紋が広がった。

 なぜ、このタイミングだったのか。片岡春雄町長は言う。「きっかけはコロナだ。風力発電による売電収入は約6億円、ふるさと納税の収入が約10億円。2つで町財政の3割を占めるが、ふるさと納税はコロナの影響で制度自体がどうなるか分からない。このままでは町が疲弊する。苦渋の決断だった」