「つなぐ」と「集める」。
2020年東京五輪・パラリンピックの聖火リレーのテーマである。
1964(昭和39)年東京五輪が示したように、聖火には人々の心を一つに集め、消えることのない記憶を次代につなぐ力がある。
7月24日の夜、新たな国立競技場にもそんな火を灯(とも)したい。
日本は五輪で再生する
都心の空は前日の雨に洗われ、一面の紺碧(こんぺき)はそれ以外の色を強く拒んでいた。国立競技場の炬火(きょか)台に揺れる聖火は目の覚めるほどに赤く、見上げれば、5色の輪が東の空高くに掛かっている。
「金メダルを期待されている選手が、スタート台に立つ気持ちでした」
五輪のシンボルを描いた航空自衛隊の飛行チーム「ブルーインパルス」。昨年5月に他界した隊長の松下治英はそんな所感を残している。
1964年10月10日。東京五輪の開会式は、多くの国民にあせることのない色付きの記憶を残した。
日本の社会には世代間の溝ともいえる「経験」の切れ目がいくつかある。最たるものが戦争であり、前回の東京五輪もその一つだ。