灯す

第4部 五輪の価値(1)つないだ「祈り」 コロナ後の五輪が問う価値 

国際政治に翻弄された五輪124年史
国際政治に翻弄された五輪124年史

政治利用されながらも120年守り抜いた

 五輪の価値とは一体何なのか。

 新型コロナウイルスの感染拡大で延期を余儀なくされた東京五輪。

 世界が新型コロナに揺れる時期だからこそ、改めて五輪の価値を考えてみたい。

 7万5千人の大観衆とともに、その光景を4歳の少年が見つめていた。

 昭和39年10月24日夕。国立競技場で開かれた東京五輪の閉会式。4千人の選手が各国入り乱れ、笑いあいながら入場してきた。

 この情景を、サンケイスポーツの大阪運動部次長として記事に書いた賀川浩(95)は「かつてない和やかな閉会式。時代は東西冷戦のさなかだったが、新しい世界を示しているように思えた」と振り返る。

 4歳の少年は長じて皇太子となり、昨年、天皇に即位された。今年2月、60歳の誕生日の記者会見に臨んだ陛下は、幼き日に見た光景をこう回想された。

 「混ざり合って仲良く行進する姿を目の当たりにすることができたことは、変わらず持ち続けている、世界の平和を切に願う気持ちの元となっているのかもしれないと思っております」

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