
「知」。それはかつて専門性を極めた者にのみ、許されたものだった。
しかし今、インターネットを器に、名もなき者の無数の思考が結びつき、離れ、新たな価値を創造している。
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東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムに採用された幾何学的模様。「組市松紋(くみいちまつもん)」と名付けられた。
3種の四角形によって構成され、組み合わせ次第で織りなすパターンは50万通り以上。ネット上には、このデザインを基にしたさまざまな意匠が発信された。
「才能がこのデザインと出合って、さらに想像もしなかった表現が生まれる」
紋様の生みの親である美術家、野老(ところ)朝雄(51)はこう語る。このデザインに込めたコンセプトこそが「集合知」だ。