灯す

第7部 のこす(3)「共生」への道のり 心のバリアフリー 次代に

 「共生」。温(ぬく)もりがあり、口にするだけで優しい気持ちにもなれる。だが、その言葉は、多様な価値観や来歴を受容できていない人々の心の障壁を示してもいる。2回目の東京パラリンピックで見えないバリアをどこまで超えられるか。

                  

 東からの海風が潮の香りを運んでくる。別府湾に面した大分市は、古代ギリシャでマラソンの語源となった海辺の町、マラトンの風景を幻視させる。

 11月15日、新型コロナウイルス禍の逆境の中で、車いすアスリートが42・195キロ先のゴール地点を目指した。「大分車いすマラソン2020」。「日本パラリンピックの父」と言われた整形外科医、中村裕(ゆたか)(1927~84年)が発案し、81年に第1回を開催。大会は世界最高峰の車いすレースとして大きく育った。