現地に行っても見たいと思っていた景観を拝めない-。せっかくの海外旅行でこんな経験をすると悲しい。世界文化遺産登録の正式決定を目前とした百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群(大阪府)。この中で世界最大級の墳墓とされる仁徳天皇陵古墳(大山(だいせん)古墳、堺市)は、前方後円墳の特徴である「鍵穴」の形を上空からでないと見ることができない。神聖な陵墓を真上から眺めることへの批判もあるが、登録を「観光の起爆剤に」と期待するにしては、観光客目線が抜け落ちていないか。同古墳群の現状には、わが国の観光の弱点も透けてみえる。
◆全景を見られない
いよいよ今月30日からアゼルバイジャンで開かれる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会(7月10日まで)で同古墳群の世界遺産登録が決まる。委員会の諮問機関・イコモスが5月に登録を「勧告」しており、登録はほぼ間違いない。