偏西風

「避難の在り方」再考 リスクある地に住まない時代 大阪社会部次長・真鍋義明

間隔をあけてマットが敷かれた避難所=5日、熊本県人吉市の人吉スポーツパレス(宮崎瑞穂撮影)
間隔をあけてマットが敷かれた避難所=5日、熊本県人吉市の人吉スポーツパレス(宮崎瑞穂撮影)

 平成30年7月の西日本豪雨から2年が過ぎようとする矢先、熊本県南部を中心とした九州の広い範囲が豪雨災害に見舞われた。関西を含む西日本の水害を毎年のように報じている身としては、記録的な豪雨や水害はもはや常態化したと感じる。新型コロナウイルスの感染拡大で「避難の在り方」の再検討が迫られている最中でもある。国や自治体は防災・減災対策が新局面に入ったと位置づけ、切迫感をもって対応に当たらねばならない。

 九州を襲った豪雨で大きな被害が出た熊本県人吉(ひとよし)市。最大の避難所「人吉スポーツパレス」では今月5日、マットを敷いたり間仕切りを置いたりする新型コロナの感染防止策が取られた。被災者がすし詰めになっていた過去の大規模災害と比べると、違いは一目瞭然だ。

 ただ、事はそう簡単ではない。ワンタッチで本体が広がるテントのような間仕切りを配備した大阪府大東(だいとう)市。感染対策にはなるが「これまで約600人を収容できた体育館は、この間仕切りを使うと約200人に減る」(中村康成・同市危機管理監)。被災者同士の距離を取れば、どうしても避難所の収容能力は下がる。今年3月に大雨などで川が増水し、避難指示を出した北海道標茶(しべちゃ)町では被災者の距離を取った結果、数人を別の避難所へ誘導したという。