偏西風

ニーズなき技術競争 パネルベイ凋落の必然 松岡達郎

シャープが堺市に建設した液晶パネル工場周辺。工場は鴻海が子会社化した=平成28年3月、堺市堺区(本社ヘリから)
シャープが堺市に建設した液晶パネル工場周辺。工場は鴻海が子会社化した=平成28年3月、堺市堺区(本社ヘリから)

 世界に冠たる技術を誇った「日の丸液晶」の終幕だった。官民ファンドINCJ(旧産業革新機構)の支援により、平成24年に日立製作所や東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合してできた液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)が中国や台湾の企業連合の傘下入りを決めた。お家芸ともいわれた液晶の凋落(ちょうらく)は、実は10年以上前の絶頂期に既に始まっていたのではないか。当時最先端を走っていたある技術者のひとことが今さらのようによみがえる。

 ◆大阪湾岸の巨大工場群

 約10年前、大阪湾から播磨灘にかけての沿岸地域は「パネルベイ」と呼ばれていた。液晶テレビやプラズマテレビの巨大パネル工場が集積し、とくに堺市のシャープのパネル工場は、部材メーカーの関連工場も含めて総投資額1兆円の「液晶コンビナート」と称して威容を誇っていた。