歴史に消えたうた 唱歌、童謡の真実

(21)台湾に残る「わが師の恩」

明治17年の「小学唱歌集」第三編に掲載された『仰げば尊し』の歌詞と楽譜 (東書文庫蔵)
明治17年の「小学唱歌集」第三編に掲載された『仰げば尊し』の歌詞と楽譜 (東書文庫蔵)

 連載の初回(平成31年4月3日付)で、かつて卒業式の定番曲だった『仰(あお)げば尊(とうと)し』を現代の子供たちが「歌えなくなっている」と書いた。小学校の音楽教科書(6年生用)に掲載されているのに、授業ではあまり教わらない…。卒業式で歌わないからである。時代とともに卒業ソングが多様化したこともあるが、“戦前の教育臭”を感じて避ける先生もいると聞く。

 『仰げば尊し』は明治17(1884)年、当時の文部省音楽取調掛(とりしらべがかり)(後に東京音楽学校→現東京芸大)編纂(へんさん)の「小学唱歌集」第三編に収録された。メロディーは外国曲とされ、日本語歌詞の作者は諸説ある。「小学唱歌集」には『蝶々(ちょうちょう)』『蛍(の光)』などが入っており、いずれもメロディーは外国曲の借用だった。