偏西風

女流義太夫、知っていますか 上方落語、講談に続け 亀岡典子

昨年の「瑠璃の会」で「本蔵下屋敷の段」を勤める竹本住蝶(すみちょう)さん(左)と豊澤住輔(すみすけ)さん =大阪市中央区の国立文楽劇場小ホール(「瑠璃の会」提供)
昨年の「瑠璃の会」で「本蔵下屋敷の段」を勤める竹本住蝶(すみちょう)さん(左)と豊澤住輔(すみすけ)さん =大阪市中央区の国立文楽劇場小ホール(「瑠璃の会」提供)

 かつて、女性アイドルなみに人気を誇った伝統芸能があった。「女流義太夫(ぎだゆう)」である。女性が義太夫節の語りと三味線を勤める芸能で、明治時代には“ファンクラブ”ができるほどの隆盛を見たが、次第に演奏者が減少、義太夫節の本拠地である大阪では近年、公演もできないほどになっていた。だが、ここ数年、定期公演やワークショップが積極的に行われ、ファンの裾野が広がりつつある。女性が奏でる義太夫節には、男性とはまた違った魅力がある。上方文化の活性化のためにも、女流義太夫の再興が期待される。

 ◆定期公演復活、今年も

 「年寄ったこの母が、一人残ってこれがまあ、なんと生きていらりょうぞ(中略)」と、取りついては泣き叫び…

 昨春、大阪市中央区の国立文楽劇場小ホールで開催された女流義太夫「瑠璃(るり)の会」の公演。「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)・早野勘平腹切(かんぺいはらきり)の段」で竹本土佐恵(とさえ)さんの語りと鶴澤駒清(こまきよ)さんの太棹(ふとざお)三味線が、若くして命を散らした勘平の義理の老母の悲しみを切々と語り尽くすと、場内を埋めた観客から大きな拍手が起こった。