発達障害「生きづらさ」を生きる第3部(2)

周囲の理解と本人の気づき 8割の職場が研修せず

 「彼との衝突が苦になって、アルバイトの学生が何人も辞めました」

 大阪府内のコンビニエンスストアのオーナー、星野貴さん=仮名=はため息をついた。「彼」とは、10年ほど前から同店でアルバイトで働く40代の男性だ。

 最初は、男性が黙々と仕事に取り組む姿勢に「単に真面目な人」だと感じていた。だが、少しずつ違和感を覚えるようになった。

 仕事の手順はいつも決まっていて、唐揚げなどの揚げ物があまり売れない時間帯でも調理を始め、レジの前に客が並んでいても、決まった時間に掃除をして手伝おうとしない。

 星野さんの注意も頑として受けつけない上、冗談が通じないから他の店員との軋轢(あつれき)も絶えない。

 ちょうど、発達障害という言葉が世間で認知され始めたころ。「もしや、彼がそうなのか」と思い、専門書を手に取った。《特定のものやことがらにこだわる》《厳密にルールを守ろうとする》《相手の反応や状況を察するのが難しい》。書かれている発達障害の一つ、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴が、ぴったりと男性に当てはまったと感じた。

 ある日、店員の間で共通の知人女性が話題にのぼった。女性は会話のキャッチボールができず、意思疎通をすることが困難という。男性が女性についてこう話していたのを聞き、星野さんは驚いた。

 「あの人は発達障害で、僕たち普通の人間とはちがうんです」。男性は、自身が発達障害かもしれないという自覚はなかった。

《連載》発達障害「生きづらさ」を生きる
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