昭和の電車

(1)大阪市電901型 「モダン大阪」の象徴

 懐想の色眼鏡を通して見れば、過ぎ去りしものは皆美しい。昭和の時代を私たちと共に生き抜いた愛しの電車たちを、イラストとコラムで偲(しの)んでみたい。まずは、昭和30年頃の関西の電車に的を絞ってみる。

 当時の関西の玄関口と云(い)えば国鉄大阪駅。そこに降りたった人がまず眼にするのは、活気あふれる大阪市電の姿だった。すでに「無音電車」と呼ばれる新性能試作車3001号が姿を現してはいたけれど、量産は昭和31年からのこと。未だ旧性能車の天国で、戦前派も戦後派も見事に整備されて元気一杯、大阪市の四方からこの大阪駅前に集まってきては又散ってゆく。その様はダイナミックの一言につきた。

大阪市電901(イラスト 関三平)
大阪市電901(イラスト 関三平)

 それら働き盛りの旧性能車の中でも901型は、昭和11年から13年にかけて100余輌が量産された、大阪市創案の「二扉中型車」に流線型デザインをまとったシリーズのひとつ。側面が太鼓張りにふくらんだ姿は、戦前の我国では他に例を見ないユニークなもので、「モダン大阪」を象徴する存在だった。戦争で数を減らしたが、それでもこの時期、80余輌が市内を元気に駆け回っていた。

 自動車産業の圧力にあって(?)、他都市に先がけて市電全廃が断行されたのは残念なことだった。イラストバックの阪急ビルも建て替えられてしまい、今や大阪駅前には、彼女らを偲ぶよすがとてない…。(迷図作家 関三平)

 ※この連載は、産経新聞大阪夕刊で平成22年9月から平成31年3月まで連載されていた「昭和の電車」をWeb限定で復刻し、掲載しています。
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