真言宗の開祖、弘法大師・空海(774~835年)が平安時代に開いた日本仏教の聖地、世界遺産・高野山(和歌山県高野町)には古くから7つの不思議な言い伝えがあるという。今も大師が御廟(ごびょう)で瞑想(めいそう)しているとされる「天空の聖地」では、どのような怪異が伝承されてきたのか。特に神聖な地とされる奥の院を、怪異を研究する国際日本文化研究センターの木場貴俊プロジェクト研究員(41)と巡ってみた。 (藤原由梨)
古代、怪異は政治的なものだった
奥の院は入り口から御廟まで一の橋、中の橋、御廟橋という3つの橋と川がかかり、渡るごとに清らかな地に近づくとされる。参道には、樹齢数百年の巨大な杉の木と、有名武将から歌舞伎俳優、企業の物故者まで、20万基以上の供養塔が並ぶ。
「平安時代から、神仏と怪異には親和性があります。凶事が起きる前の予兆として、お堂が鳴動するとか、仏像が汗をかいたり、流血したりとか」