10月7日

産経抄
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 わが家にはこの夏、2週間ほど居候の客がいた。どこから来たのか、壁と棚の隙間を出入りしていたのは幼いコオロギである。「ろくな食べ物もなかろう」と同情を催し、庭草に放してやった。虫のすだきを耳にする度、草陰に消えた小さな命を思い出す。

 ▼「すだく」は漢字で「集く」と書く。虫たちの唱和はなるほど、声をかぎりにわが夜を謳歌(おうか)する命の集いだろう。日本では古代から歌や詩に詠み込み、アングロサクソン系の人々は「雑音」だとして聞き捨てた。「日本人は虫の音を左脳で聞き、欧米人は右脳で聞く」の説がうなずかれる。