10月8日

産経抄
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 1917年4月、ニューヨークで誰でも出品できる美術展が開かれることになった。直前になって送られてきたのが、男性用便器に「R・マット」と偽の署名をしただけの作品「泉」である。果たして芸術作品といえるのか。議論の末に出品は拒否される。

 ▼作者はフランスの美術家、マルセル・デュシャンだった。美術展の実行委員の一人でもあったデュシャンは、便器の写真とともに抗議文を雑誌に掲載する。美術史上名高い「リチャード・マット事件」である。「泉」はその後行方不明となり、複製品しか残っていない。それでも、現代美術にもっとも大きな影響を与えた作品ともてはやされてきた。