10月21日

産経抄
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 東京の桜田門から虎ノ門へと走る道は桜田通りと呼ばれる。戦前、通りの南側には〈明治の匂(にお)いのする古風な赤煉瓦(れんが)の建物が二つ建っていた〉と、阿川弘之さんの小説『春の城』にある。その一つが海軍省だった。

 ▼阿川さんいわく海軍はムダ、ムラ、ムリを嫌い、言葉尻を取った「ダラリ追放」の標語も掲げたという。「ジリ貧を避けようとしてドカ貧にならぬようご注意願いたい」。日米開戦前夜、海軍相の米内光政が主戦論を懸念した言葉は、同じ文脈から出たものだろう。