12月16日

産経抄
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 米国暮らしの長かった絵本作家の八島太郎さんに、人柄のにじむ挿話がある。久々の帰国で〈飛び出すな車は急に止まれない〉の交通標語を目にし、「話が逆だ」とこき下ろした。「〈飛び出すぞ子供は急に止まれない〉がほんとじゃないかね」。

 ▼阿川弘之さんの『エレガントな象』から引いた。言われてみれば、日本の交通事情は違和感に満ちている。横断歩道前で立ち止まるその多くが、車ではなく歩行者という現実がある。運転手が歩行者の飛び出しを疑わず、好意に甘えているとすれば妙な社会である。