12月27日

産経抄
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 夏目漱石の名刺を見たことがある。本名の夏目金之助の他、余計なものは何もない。明治44年に文部省から文学博士号を授与されても、躊躇(ちゅうちょ)なく辞退している。「たゞの夏目なにがしで暮したい希望を持つております」。取り付く島がない断り状の文面は、あまりにも有名である。

 ▼「墓ハ森林太郎墓ノ外(ほか)一字モホル可(べか)ラス…」。陸軍医としても最高位をきわめた森鴎外も、墓には本名以外何も彫るなと言い残した。明治の文豪は、肩書にまったく執着しなかった。