1月3日

産経抄
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 歌舞伎の六代目菊五郎は、大の相撲好きだった。昭和14(1939)年1月15日、双葉山の連勝が69で止まった「世紀の番狂わせ」も、マス席から見ている。悲鳴と怒号、座布団が飛び交うなか、ただ一人顔色一つ変えなかった双葉山の姿に、深く感じ入ったようだ。翌日、面識のない双葉山に手紙を書いた。

 ▼元日付の読売新聞が、その内容を報じていた。菊五郎は双葉山を「空前不世出にして天下に麗名高き」とたたえ、今後も「斯道(しどう)に邁進(まいしん)せられん事を切に祈り上げます」と激励している。文面に感激した双葉山は早速歌舞伎座を訪ね、53歳の名優と26歳の名横綱の交友が始まった。