幼い頃の思い出として多くの人が肩車を挙げる。詩人の長田弘さんもその一人だった。「わたしは巨人だ。ちっちゃな巨人だ。わたしの見ているものはほかの誰にも見えないものだ」。「肩車」という詩に、父親の肩の上から見た光景をつづっている。
▼では、娘の肩車の上にはどんな世界が広がっているのだろう。世にもまれな機会にめぐまれたのが、レスリング女子の吉田沙保里さんの父、栄勝(えいかつ)さんである。ロンドン五輪で吉田さんが3連覇を決めると、栄勝さんを肩にかついで喜びを分かち合った。その姿は五輪史に残る名場面といえる。