産経抄

2月18日

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 学徒出陣で召集された若者の多くが、『万葉集』を携えていた。京都帝国大学文学部を繰り上げ卒業して海軍航空隊に入隊した、直木孝次郎さんもその一人である。

 ▼ある日、前線から帰ってきた飛行少佐の訓話を聞いた。圧倒的な米軍に勝つには、お前たちに死んでもらうしかないという内容だった。〈死ねといふ訓話終りて道場を出づれば雨の夜は深かりき〉。訓話の後に詠んだ歌である。