産経抄

2月26日

Messenger

 日本文学者のドナルド・キーンさんは、「東北に対する私の偏見」と題した講演を行ったことがある。日本に興味を持ち始めたころ、寒くて暗い印象を持っていたという。偏見を取り去ってくれたのが、松尾芭蕉の『奥の細道』である。昭和21年、米コロンビア大学の日本文学の授業で出合った。

 ▼戦時中は語学将校として、戦死した日本兵の日記を翻訳したり、捕虜の通訳を務めていた。日本語に自信を深めていたキーンさんでも、まったく歯が立たない。何度も読み込むうちに、魅力に取り付かれた。