産経抄

3月6日

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 曹洞宗の開祖、道元は23歳のとき、宋の国に留学する。まだ港に停泊中の船に老いた僧が、日本のしいたけを買いにやってきた。禅寺で食事をつくる役職である典座(てんぞ)だった。

 ▼道元はそれまで、ひたすら座禅に励み、古人の語録を学んできた。典座との出会いから、毎日の食事の用意もまた仏道修行の一環だと悟る。「米(べい)を淘(え)り菜等を調(ととの)うるには、自ら手ずから親しく見、精勤誠心(しょうごんじょうしん)にして作(な)せ」。