産経抄

3月17日

 「叱る」という字の旁(つくり)をなす「七」は鋭い刃で切ることを意味する。つまり口舌の刃(やいば)で相手に傷をつけること。さりとて一刀両断では相手の立つ瀬がないし、多言を弄して切り刻んでも恨みを残す。力加減が難しい。

 ▼わが国で作られた漢字には、「●る」という字もある(『「国字」字典』世界文化社)。色眼鏡ではなく無色透明のまなざしで物事を見て、誤りを諭す。そんなニュアンスらしい。字体からは情けの深さや思慮がにじみ、日本ならではの成り立ちにうなずかされる。