産経抄

3月19日

 明治初年に日本に赴任していた清の外交官のなかに、黄遵憲(こう・じゅんけん)という詩人がいた。東京で初めて見た桜の花のあでやかさに感激していた。同時に、日本人が桜に抱く思いの強さに驚いている。

 ▼「三月の花のころには、昔は公卿百官(こうけいひゃっかん)、みないとまをいただき、花を賞した。今でも車をつらね、馬にうちのり、男女これにあつまり、国をあげて狂せんばかりである。日本人はこれを花の王という」。当時の花見の様子を著書の『日本雑事詩』(東洋文庫)につづっている。