産経抄

3月20日

 電子部品メーカー、東京電子工業を一代で築き上げたワンマン社長、石原修の急死で物語は始まる。長年側近として仕えてきた副社長の宮本正樹が、昇格するのが順当であり、本人も野心がないわけではない。

 ▼ただ宮本の後は、筆頭株主の家電メーカー、M電気が送り込んだ専務の野村周造に順番が回る。そうなれば、石原が望んだ自主独立路線は退けられ、M電気の支配下に置かれる。高杉良さんの経済小説『あざやかな退任』は、会社を守るために宮本が下した決断をタイトルにしている。