産経抄

5月12日

 『三国志』で武名が高い蜀(しょく)の関羽は、「財神」として現代の中国人に祭られている。つまり商売や金儲(もう)けの神様である。正しい行いをして富を得たい-との庶民の願いに、公平無私の人として描かれた関羽がマッチするからだという(『中国文化55のキーワード』ミネルヴァ書房)。

 ▼財神とワンセットで語られるのが、「聚宝盆(しゅうほうぼん)」という縁起物である。財宝を中に入れれば、際限なく増えて金持ちになれる。打ち出の小づちを思わせる説話がある。もちろん拝めばかなう利殖などあるはずもなく、現実の金儲けには背徳のにおいが往々つきまとう。