産経抄

5月26日

 福沢諭吉を乗せた咸臨丸が米国に渡った頃、日本は攘夷の風雲のただ中にあった。司令官で軍艦奉行の木村芥舟(かいしゅう)は何を思ったのか、こうもり傘を土産に買っている。帰国したとて雨傘でしのげる国難の嵐ではない。

 ▼日本でこれを差したらどうなる? 浪人者に斬(き)られるのがオチでしょう-。雲行きの容易でないことは、乗組員たちも察していたらしい。「屋敷の中で折ふしひろげてみるよりほかに用のない品物だ」と。たわいない会話を、福沢が『福翁自伝』に書き留めている。